相談内容
Q 年金暮らしをしている者です。別居している50代の息子に消費者金融からの借金があることが判明しました。住宅ローンの支払いが遅れていることに息子の嫁が気付き、問い詰めたところ、借りた金をギャンブルに使ったとのことです。1社から140万円の借入れをしていて、その返済を優先したあまり、住宅ローンの支払いが遅れ遅れになってしまったようです。
私たち夫婦には多少の蓄えがあり、全額立て替えてあげようかと思っています。何か問題はありますでしょうか。また、今後、息子がお金を借りられなくなる方法はないものでしょうか。
なお、嫁には内緒ですが、息子にはこれまでにも何度か金銭のことで泣きつかれ、そのたびに数十万円~100万円以上の金銭を援助してあげています。
司法書士のアドバイス
A 親が子の借金の支払いを助けてあげることについて、(税務上の論点は省きますが)法的には特に問題になることはありません。しかし、実質的に様々な問題があると考えます。
借金の根本的な原因は何か
これまでにも何度が援助をしているとのことですが、表面的に借金がなくなって「すっきりした」ように見えても、根本的な借金の要因が除去されなければ、何も解決できておらず、同じことを繰り返す可能性が高くなると思われます。
例えば、ギャンブルのために借金を繰り返している場合、依存症またはその予備軍である可能性が高く、息子さんが専門機関に相談したり、その治療を行うなど、まずは借金の根本原因の除去から始める必要があるでしょう。
息子は「優良顧客」に…
親が一時的に全額を返済しても、貸す側からすれば、息子さんの信用はむしろワンランクアップした、貸付けたい優良な顧客となり、貸付できる限度額もより高額になるのが一般的です。「まとまった金額を一括で返済できる経済力がある人物」などと評価されるからです。
この評価は、返済したその債権者に限らず、他の貸金業者等も同じことがいえます。信用情報のシステムによって返済等の情報が共有されるからです。
親が子の借金の後始末をすると、子は2度3度と同じことを繰り返し、負債額も高額になるなど、より一層事態が深刻化するのは、このように信用情報のシステムがマイナスに作用する結果だと思っています。
正確な状況把握を…
上記のケースで息子さんは、自身に都合の悪いことは家族に知られたくないと考えるのが通常であり、借金が本当にその1社だけなのか、勤務先や知人などからの借入はないのかなど、十分に確認する必要があります。
例えば、他にも負債があり、個人再生手続き等の裁判上の法的手続きが必要になった場合、親が一括返済したその貴重な金銭は、ほとんど意味がなかった(無駄になった)ということにもなりかねません。そればかりか、後日、一部の債権者に対する偏った返済(法律用語で「偏波弁済」という。)として、むしろ裁判所等から問題にされる場合もあります。
貴重な金銭は有効に活用を
また、例えば、一部の債権者に対する返済としてしたその金銭があれば、他に有効活用できたと後悔することもよくあることです。詳細な説明は省きますが、車の代理購入であったり、孫への教育資金の供与であったりが典型例です。
最悪、共倒れに…
ギャンブル等により繰り返す子の借金を、親が全て肩代わりすると、親が徐々に疲弊してきて、その経済力が悪化し、親も経済的に困窮したり、場合によっては破綻するケースも事例として存在します。
「家族は助け合うのが当然!」と豪語される親世代の方々も少なくありませんが、客観的にみて、特にギャンブル等の「依存型による借金」の場合は、助けるどころか結果的に子を追い詰めていると見えてしまうケースも少なくありません。
重要なことは…
親が子の借金の後始末をする前に、その原因を明確にすること、毎月の収支の状況や、特に、負債額を正確に把握することが重要です。
そして、それらのことや依存症等の問題を克服するために、特に本人を中心に生活の見直し等をしていくわけですが、これらの作業を、家族だけで行い、解決に導くことは至難の業だと考えます。公的機関や信頼できる専門家を交えて対応していくべきでしょう。
借りられなくしても…
貸金業協会等に「貸付自粛制度」という、一定期間、貸付を受けられなくなる手続きがあります。これには、申請は本人からする必要があるほか、本人から自粛の解除ができてしまうなどの問題点があります。
しかし、本事例のような場合、周りの勧めで本人が渋々自粛の手続きをとったとしても、果たして問題が根本的に解決できるのか甚だ疑問です。
ギャンブル依存症の方の中には、「ギャンブルで稼いで借金を返済できる」と、本気で考えている人も存在します。ギャンブルで儲かった時の記憶だけが鮮明に頭の中に残っているのだと思います。まずはそこから変えなければダメだと思います。
いくら表面的、形式的に借金をし難くしても、。「借金に関する反社会的・反道徳的な組織や個人」が存在し、上記事例の「息子」のような人物を標的にして利益をむさぼろうとしてきます。息子のほうは、「何とかして借りたい」と考えていますから、借金に関する反社会的・反道徳的な人物らと利害が一致してしまいます。
現代社会における彼らは、昭和の時代の怪しげな金貸しとは異なり、好感の持てる好青年であったり、やさしい女性の甘い声で個人情報を聞き出し、高利の約束で金を貸してきます。
現代人は、免許証やマイナンバーカードを提示する機会が増え、それらを第三者に提供することに抵抗を感じる人が少なくなってしまったように感じます。高利とはいえ、借金する立場であるから、借りる側は、「個人情報を提供するのは当たり前」、と考えてしまい、いとも簡単に個人情報を反社会的・反道徳的な人物にまで提供してしまいます。そして、高利の返済ができなくなると、彼らに、「借主は金を騙し取った詐欺の加害者」などとしてその個人情報をネット上でさらされてしまいます。
また、油断すると、家族の情報までも聞き出されていて、高利の返済ができなくなると、彼らは、家族の勤務先や学校に対して連絡をしてきて、「借主に金を騙し取られた」などと、被害者を装い、借主やその家族を苦しめます。
こうなると、もう誰にも助けることができません。
※弊事務所でも、これを「何とかしてほしい」という相談には応じることができません。
このような状況に陥るのは、特別な人間だろうと思いがちですが、大企業の従業員や公務員もしばしば被害にあっており、一つ歯車が狂うと、誰しもが陥るおそれがある問題として捉えるべきだと思います。
結論(が出ない)
ギャンブル依存による借金問題で何より重要なのは、本人が変わることだと思います。しかし、これが一番難しく、そう簡単に問題解決のための答えが出せるものではないと痛感しています。
みらいリーガルオフィス
司法書士 大関 彰

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